一人ひとりの肌や好みに合わせた化粧品を誰もがミスなくつくれる仕組みを目指して
- 化粧品
- GMP
- 工程管理
- 品質管理
- トレーサビリティ
株式会社資生堂 様
- 創業:
- 1872年
- 設立:
- 1927年
- 資本金:
- 645億円
- 業種:
- 化学
- 事業内容:
- 化粧品、化粧用具、理・美容製品の製造・販売および美容食品医薬品の販売など
- 従業員数:
- 35,318名(2021年12月末時点)
資生堂様は2019年4月、横浜・みなとみらい21地区に研究開発の拠点およびお客様とのコミュニケーションを商品へ反映するための共創の場として、「資生堂グローバルイノベーションセンター(GIC・呼称「S/PARK エスパーク」)」をオープンしました。1階にはパーソナライズ化粧品を製造するラボ(GIC工場)があり、TONOPS®を導入しています。今回は、運営に携わるS/PARK事業企画グループの皆様にお話を伺いました。
課題
- 一つひとつ異なる製造への対応
- 低コスト・短期間での導入
- 化粧品GMPへの対応
TONOPS®の導入
- 小ロットに特化したシステム構築
- コストを抑えスピーディーに導入
- 人為的ミスが起こりにくい仕組みづくり
成果
- 高品質の製品をミスなく安定して生産できる
事業について
お客様との共創の場で、お客様お一人おひとりの肌や好みに合わせた化粧品を製造・販売しています。
「資生堂グローバルイノベーションセンター(GIC・呼称「S/PARK エスパーク」)」は、「美のひらめきと出会う場所」をコンセプトに、1階と2階が「S/PARK Beauty Bar」「S/PARK Cafe」「S/PARK Studio」や「S/PARK Museum」などの美の複合体験施設となっています。そのコンテンツの一つである「S/PARK Beauty Bar」で提供しているのが、一人ひとりの肌や好みに合わせた化粧水・乳液をおつくりする「パーソナライズスキンケアサービス」です。研究員がお客様の肌を細かく測定・解析して決定したベース処方に、お客様自身が選んだテクスチャー、香り、パッケージデザインを組み合わせて「美容箋」を作成し、それに沿って併設のラボ(GIC工場)で商品「マイコスメ」を製造しています。世界に一つだけの化粧品づくりを通して研究員とお客様が接点を持つことで、商品開発につなげていこうと取り組んでいます。
当時の課題
資生堂の新たな挑戦をカタチにするために、生産管理システムの導入を目指しました。
2018年、私たちS/PARK事業企画グループでは、施設のオープンに向けて「マイコスメ」の製造・販売を企画しました。数々の化粧品を生み出してきた資生堂ですが、お客様お一人おひとりにパーソナライズした化粧品を提供することは新たな挑戦でした。さらに、“お客様との共創”を目指すこの施設でしか体験できない価値を生み出すためにも、製造過程が外から見えるオープンなラボ(GIC工場)を作りたいと考えていました。
そして、こうしたイメージをカタチにするには、一つひとつ異なる製品をつくるための小ロットに特化した生産管理システムを、施設のオープンに合わせて低コスト・短期間で導入する必要がありました。また、実験室ほどの面積の小さなラボですが、製造には化粧品GMP※に準拠した社内規程をクリアし監査を受けたうえで、最終的には自治体から製造業の許可を得る必要があり、品質トラブルを絶対に起こさない仕組みを作る必要がありました。しかし、社内のシステム開発部門と連携してゼロからオーダーメイドで生産管理システムを開発するにはコストやスケジュールの面で難しく、私たちがベンダー選定から主導して立ち上げを行わなければならないという、社内に前例のないチャレンジをしなくてはなりませんでした。
※化粧品GMP…化粧品の製造における製造管理・品質管理の基準を示した国際規格。
システム導入の経緯と
TONOPS®を選んだ理由
求める要件を実現できると確信。導入後のサポート体制も決め手になりました。
生産管理システムの導入にあたって、まず検討したのがゼロからオーダーメイドで開発を行うことでした。しかし、小さいラボながらもGMPが求める要件を満たすには、億単位のコストと年単位の期間を要することがわかりました。そこで、一般的な製造現場で使われるベース機能が備わったパッケージソフトなら、要件を満たすものがあるのではないかと調査を開始しました。
しかし、私たちが想定していた、一つひとつ異なる製品を誰でもミスなく製造できる仕組みを実現するようなパッケージソフトは見つかりませんでした。カスタマイズしようとしてもできなかったり、できるものであってもコストやスケジュールの面で難しいこともわかりました。そのような状況の中で出会ったのが、東レエンジニアリングDソリューションズのセミパッケージソフトです。パッケージの要素もありながらも柔軟にカスタマイズできると知って、「私たちが求めていたのはこれだ」と感じました。商談のなかで、担当者の方からTONOPS®は導入後のサポート体制にも力を入れていると丁寧に説明していただき、その誠実な姿勢からこれからの長いお付き合いの中でシステムをブラッシュアップしていけると感じ、導入を決めました
導入の成果
誰でもミスなく生産できるシステムを構築。細部までカスタマイズで作り込みました。
TONOPS®導入により、2019年4月から「マイコスメ」を製造していますが、非常に使いやすく制御機能にも優れ、これまで品質トラブルを起こしたことは一切ありません。このシステムならミスを確実に防ぐことができ、「誰でもミスなく生産できるシステム」を実現できていると感じます。私たちはシステム導入において、製造面や品質面だけでなく、業務環境の改善も重視していました。一般的に、製造現場では作業工程をはじめ覚えなければならないことが多く、それが作業者の負担となっています。そして、導入時に担当エンジニアの方がこうした要望をくみ取り、細部までカスタマイズで作り込んでくださったおかげで、シンプルで操作しやすいシステムが実現しました。
製造時、作業者はタブレットに表示される工程を順番通りに進めていくと、問題なく製品ができあがるようになっています。また、原料容器に二次元コードを付けて読み取る形式にするなどミスを防ぐのはもちろん、万が一でも、誤った操作が起きないようにエラーチェック機能も備わっています。こうした仕組みは、「いつ誰が作業しても安定して同じ品質の製品がつくれる」というGMPの要請にも適合するものになっています。
作業指図はタブレットに表示される。作業者にとってわかりやすいよう、原料ピックアップ、秤量、調合など工程ごとに表示される仕組みになっている。
計量器と生産管理システムを連携させることで、秤量時の数値入力を自動化しミスを防いでいる。
製造では順番通りに原料を投入しなければ次のステップに進めない。
最終的に出荷責任者がチェックし、許可の出た製品がお客様の元へ配送される。
導入時に
苦心されたこと
担当エンジニアは心強いパートナー。困難を一緒に乗り越え、システムを構築してくれました。
化粧品GMPへの対応など専門的な課題が多いうえ、生産管理システムを構築しようとすると社内のシステム部門や品質保証部門をはじめとする関係各所との調整が煩雑になり、本当に苦労しました。しかし、厳しい状況の中でも担当エンジニアの方のサポートがあったおかげで、短期間でテストしながら改善を繰り返し、化粧品GMPに準拠し社内監査をクリア、オープンまでに必要な許可を得ることができました。
また、「誰でもミスなく生産できるシステム」を構築するという方向性は当初から明確にありましたが、その要件を整理してシステムに落とし込んでいくプロセスも難しかったです。私たちから担当エンジニアの方にわかりやすく伝えるよう心掛けていましたが、最初はお互いの共通言語がない状態なので、打ち合わせを重ねてお互いに理解し合えるようになるまでは時間がかかりました。しかし、担当の方が理解しようと努力してくれたおかげでお互いに意思疎通できるようになってからは、スムーズに進んでいったと思います。私たちのやりたいことを実現してくれた担当の方は、重要なパートナーです。
現在では社内でも認知度が上がっており、「小ロットの製造事例として参考にしたい」と訪問いただいた際は、小さなラボなのに大規模な工場と同等の製造・品質管理を実現していることに驚かれます。
今後の展望
さまざまなアイデアをいただきながら、新商品の発売に向けたシステム改修を行っています。
TONOPS®導入後、機能を段階的に拡張してきましたが、現在は新商品の発売に向けてシステム改修の支援をいただいています。S/PARKのオープンから4年経ったこともあり、「S/PARK Beauty Bar」では「マイコスメ」に続く新たな商品の開発に取り組んでいます。「マイコスメ」はお客様お一人おひとりに合わせてつくる化粧品であり、現在のシステムはそれに特化した設計になっています。新商品はそれよりもう少し大きなロットでの生産を考えているため、これまでのシステムでは適用できない部分があり、その部分を新商品に合わせて開発していただけるよう、担当エンジニアの方に相談しています。私たちのやりたいことに対して「できない」とは一切言わず、「こうしたらどうですか?」とさまざまな角度からアイデアをいただけるのは大変助かっています。今後も、誰がつくっても安定した品質の製品ができ、よりわかりやすく操作できるシステムを追求していきたいです。